無料の英語教材にこだわると逆に損をする|生成AI時代の教材選びと英語教師の役割

無料で利用できる英語教材が増え続けています。英文、音声、動画、単語帳。生成AIを使えば、英文もイラストも短時間で大量に作れる時代になりました。

しかし、無料で使える教材が増えたからといって、英語学習が効率的になるとは限りません。

教材費を節約するために、質の低い教材で何十時間も勉強していたら、むしろ大損です。

英語学習で最も貴重なのは、お金よりも時間です。無料という理由だけで教材を選んでいないか、一度考えてみてください。

目次

1. 無料の英語教材にこだわる人ほど損をする

英語力を伸ばすには、数百時間、場合によっては数千時間の学習が必要です。

それほど多くの時間を費やすのに、教材費の1,000円や2,000円を惜しむのは合理的でしょうか。

もちろん、無料でも優れた教材はあります。問題なのは、無料であることを最優先して、教材の品質や学習目的との相性を後回しにすることです。

大学受験を控えた高校生なら、入試に必要な語彙や表現を学べる英文を読むほうが効率的です。英検2級を目指す人なら、英検2級の出題傾向に合わせて作られた教材を使うべきでしょう。

ところが、無料だからという理由で、試験との関連性も分からない英文を何十本も読んでいたらどうでしょうか。

英文を読んだ時間は増えても、目標達成につながるとは限りません。

教材費を節約しているつもりで、最も貴重な学習時間を浪費している可能性があります。

2. 無料の英語多読サイトは本当におすすめなのか

具体例として、無料で大量の英文を公開している「原田英語の多読ベスト」を取り上げます。

このウェブサイトは2026年10月にはてなブックマークで大きな注目を集めていました。

トップページの画像を見れば一目瞭然ですが、生成AIが主導して作成されたウェブサイトです。画像右のフクロウは、ChatGPTでイラストを作成するとよく登場するものです。

そしてこのサイトには、古典文学を英語学習者向けに簡略化した英文も掲載されています。

例えば、オー・ヘンリーの『賢者の贈り物(The Gift of the Magi)』です。

原作は約2,077語ですが、掲載されている学習用英文は596語。原作の約7割が削られています。

原典をそのまま読むならまだしも、100年以上前の古典文学を生成AIが簡略化した英文。このような英文を現代の英語学習者が学ぶことに、どれほどの意義があるのでしょうか。

文学作品の魅力は、物語の筋書きだけではありません。作者が選んだ言葉、文章のリズム、ユーモア、時代背景なども作品の重要な要素です。大幅に短縮された再話では、そうした魅力の多くが失われてしまいます。

あらすじだけ知りたいのなら、Wikipediaの英文を読んだ方がましです。

何十年、何百年と読み継がれてきたのは古典の原典であって、英語学習者向けに生成AIが読みやすくした英文ではありません。

3. 2,000円を惜しんで何十時間も無駄にするな

大学受験や英検の対策なら、2,000円以下で良質な英文教材を購入できます。例えば、次の2冊です。

『速読英単語 必修編 改訂第8版』(Z会):1,540円

【音声無料】Z会の速読英単語 必修編[改訂第8版] |英語力を底上げ! 定期テスト対策・大学受験対策に

大学受験で重要な英単語を、まとまった英文の中で学べる教材です。無料音声も利用でき、単語学習と英文読解を組み合わせられます。

『英検2級 文で覚える単熟語 4訂版』(旺文社):1,980円

【音声アプリ対応】英検2級 文で覚える単熟語 4訂版 (旺文社英検書)

英検2級レベルの英文を読みながら、重要な単語や熟語を学べる教材です。音声アプリにも対応しています。

どちらも、学習対象や目的が明確です。

大学受験や英検合格を目指しているなら、こうした教材を繰り返し読み、音声を聞き、重要な表現を覚えるほうが、目的の分からない英文を次々と読むより効率的でしょう。

たった1,540円、1,980円を節約するために、何十時間もの学習効率を犠牲にする必要はありません。

無料教材を探す時間も、教材を比較する時間も、すべて学習者の時間です。

4. 英語多読なら、50年以上読み継がれる価値のある英語絵本を

試験対策ではなく、英語の物語を楽しみながら読みたい人には、優れた英語絵本をおすすめします。

英語絵本には、平易な英語で書かれ、それでいて大人が読んでも楽しめる作品が数多くあります。

例えば、次の4冊です。

The Little House(ちいさいおうち)

The Little House / Virginia Lee Burton(著・イラスト)

1943年のコルデコット賞受賞作。田舎に建つ小さな家の周囲が、都市化によって変わっていく物語です。

都市の発展や自然との共存について考えさせられる作品で、出版から80年以上読み継がれています。

Madeline(げんきなマドレーヌ)

Madeline / Ludwig Bemelmans (著, イラスト) 

1940年のコルデコット賞オナーブック。パリの寄宿学校で暮らす少女マドレーヌを描いた作品です。

韻を踏んだ英文のリズムが特徴で、音読にも向いています。こちらも出版から80年以上が経過しています。

I Want My Hat Back(どこいったん)

I WANT MY HAT BACK / Jon Klassen (著・イラスト)

2011年に出版されたジョン・クラッセンの代表作。大切な帽子をなくしたクマが、森の動物たちに帽子の行方を尋ねて回る物語です。

英文は非常に簡単ですが、登場人物の言葉とイラストが伝える事実には食い違いがあります。短い会話と絵を組み合わせることで、ユーモアと意外性のある物語が生まれています。

Last Stop on Market Street(おばあちゃんとバスにのって)

Last Stop on Market Street / Matt de la Peña (著), Christian Robinson (イラスト)

2016年のニューベリー賞受賞作、コルデコット賞オナーブック。少年CJと祖母がバスに乗って街を移動する物語です。

日常的な英語表現を学べるだけでなく、貧富の差や多様な人々の暮らし、身近な世界の美しさについて考えさせられます。

50年後も読み継がれる英文には、それだけの価値がある

無料の英語多読サイトに掲載されている簡略化された英文の中に、50年後も読み継がれる作品がどれほどあるでしょうか。

古典文学の原典は、何十年、何百年という時の試練を乗り越えてきた作品です。しかし、その内容を学習者向けに短く書き直した英文まで、同じ文学的価値を持つわけではありません。

今回紹介した『The Little House』と『Madeline』は、出版からすでに80年以上が経過しています。両作品が出版されたのは、日本が太平洋戦争で敗戦した1945年よりも前のことです。

この2作品は、日本の図書館にも数多く所蔵されています。

『I Want My Hat Back』(邦題『どこいったん』)は、2019年にユニクロとコラボするほど人気のある作品です。

ユニクロコラボの際の画像

『Last Stop on Market Street』(邦題『おばあちゃんとバスにのって』)は、イラストと文章の両方が評価されているため、100年後も読まれていることでしょう。

こういった高く評価された作品と比べて、生成AIが作成した英文はどうでしょうか。

原典ならまだしも、古典を簡略化しただけの英文が、果たして同じように時の試練を乗り越えられるのでしょうか。

何千本もの英文を公開することと、何十年も読み継がれる作品を生み出すことは、まったく別の話です。

しかも、こうした高く評価されている英語絵本は、日本の図書館で借りられます。無料で英語を読みたいなら、良質な作品を図書館で借りればよいのです。

ほかにもおすすめの英語絵本を、以下の記事で紹介しています。

(参考記事) 英語学習におすすめの英語絵本|新しい作品を中心にTOEIC・英検・大学入試・おうち英語に活用

Backwise - バックワイズ | フィリ...
英語学習におすすめの英語絵本|新しい作品を中心にTOEIC・英検・大学入試・おうち英語に活用 - Backwise TOP画像: 朗読動画が1,000万回近く再生されている "The Bad Seed" 英語の絵本は子ども向け 英語学習におすすめの英語絵本を、新しい作品を中心に紹介。実際に読んだうえで...

5. 生成AI時代の英語教師の役割は、教材を増やすことではなく厳選すること

生成AIの登場によって、英文や音声、イラストを大量に制作することは、以前よりはるかに簡単になりました。

今後は、無料で何千本もの英文を公開するサイトがさらに増えるでしょう。

しかし、学習者に必要なのは、無尽蔵に増え続ける教材ではありません。

そもそも、インターネット上には、一生をかけても学びきれないほどの英語コンテンツが存在しています。生成AIによって、その量は今後さらに増えていきます。

一生かけても学びきれないほどのコンテンツがある時代だからこそ、英語教師には教材を厳選する能力が求められます。

英語教師の役割は、学習者を無尽蔵なコンテンツに溺れさせることではありません。

むしろ、50年以上読み継がれる価値のある英語絵本や、学習目的に合った良質な教材を厳選して紹介することです。

大学受験を目指す高校生には、受験に直結する教材を。英検合格を目指す人には、その級に適した教材を。

そして、英語力全般を底上げする多読教材やサブリーダー教材を勧めるのであれば、時の試練を乗り越えた名作を厳選すべきです。

学習者が教材選びに迷う時間を減らし、学習そのものに集中できるようにする。それこそが英語教師の重要な役割だと考えています。

無料にこだわって、最も貴重な学習時間を浪費してはいけません。コンテンツが信じられない速さで無限に増え続けている時代だからこそ、教材の厳選が重要なのです。

自分に合った英語教材・学習方法を知りたい方へ

英語学習で重要なのは、たくさんの教材に手を出すことではありません。自分の英語力と学習目的に合った教材を厳選し、それを徹底的に使い込むことです。

ハル英語4技能アカデミー(ハルヨン)では、英文法・発音・英文読解・英会話のレッスンだけでなく、一人ひとりの英語力や目標に合わせた教材選び、学習計画の作成、日々の学習方法についても具体的なアドバイスを行っています。

大学受験や英検・TOEIC L&R試験の対策、社会人の英語学び直しなど、目的によって必要な教材は異なります。限られた学習時間を無駄にしないためにも、何を学び、何を学ばないかを決めることが重要です。

「どの教材を使えばよいのか分からない」「教材を次々と購入しているのに英語力が伸びない」という方は、ぜひ一度、ハルヨンの学習カリキュラム総責任者・柴田(@HAL_J)にご相談ください。

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この記事を書いた人

はるじぇー (株)ハルヨン 代表取締役

英語学習に関する有益な情報を発信しています。

得意分野は
「中学・高校英文法の学び直し」
「英会話に繋げるTOEIC L&R試験の勉強法」
です。

ツイッターは相互フォローの方針でやっているので、お気軽にフォロー下さい。

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