みなさんは、「観光分野でIoTはどのように使われているんだろう」と考えていませんか?
IoTは業界問わずあらゆる分野で活用され、ビジネスの可能性を切り開いています。観光業界でも様々な場所、シチュエーションでIoTが活用されており、地方の観光や訪日外国人の観光を手助けしています。
とはいえ、IoTが観光の分野でどのように使われているのか、イメージがつきにくいと思います。
そこでこの記事では
- 観光の課題
- 観光分野におけるIoT導入のパターン
- IoT導入事例
- 観光分野のIoTの今後の需要
などについて解説します。IoTが観光でどのように活用されているのか、大まかな概要を理解しましょう。
観光分野で課題とされていること
日本では観光業が急成長しています。2011年には約620万人だった訪日外国人は、2018年には3000万人を超えています。訪日外国人の数は7年連続で増加しており、2020年の東京オリンピック開催までさらなる増加が見込まれます。
観光業が盛んになることで、まずは宿泊・旅行業の需要が高まります。次に旅行者の買い物によって、小売業の需要も高まるでしょう。
特に地域活性化を図る地方自治体では、観光業がもたらすものに大きな可能性を感じているようです。
ただ観光によって地域を活性化させることに対しては、「観光資源の発掘」はもちろん「名産品のPR」や「訪日外国人の集客」など課題が山積しています。
実際にそもそも観光資源を提供できていない地域もあるでしょうし、うまくPRが実現していない名産品も多いでしょう。初めて日本を訪れる外国人の方は、文化の違いなどから戸惑うということも充分考えられます。
IoTなどのテクノロジーはこういった課題の解決に寄与すると期待されており、実際に観光における課題を解決している事例も多数存在します。具体的には滞在時間を増やし観光収入の増加につなげたり、旅行満足度を向上させてリピーターを獲得するなどの活用方法があります。
観光分野におけるIoT導入のパターン
観光分野におけるIoTには様々なサービスがありますが、いくつかの分類があります。
観光客への情報発信
IoTなどのテクノロジーは、情報を発信したり共有することに使うことができます。
日本の観光地として有名な地域でも、いざその土地に行ってみると「うまく観光地を巡ることができない」という課題が往々にして発生します。その土地に初めて行く人が、観光スポットを的確に巡ることは非常に難易度が高いです。また有名な観光地でも、ある一つの名所しか知られておらず、それ以外のスポットの知名度が低いとなると、観光資産を有効に使えていないということになります。
結果として観光客が本来訪問して楽しめたはずの場所に行くことができず、双方にとってもったいないという状況になる可能性があります。
そのためIoTを活用した情報の発信や提供、共有は、観光地においてとても重要なものとなるのです。
観光客への対応
IoTは、観光客への対応ツールとして活用することができます。特に訪日外国人とのコミュニケーションを取ることは、観光業において欠かせません。IoTでは主に自動翻訳イヤホンなどの翻訳システムとして活用されています。
日本に訪れる外国人観光客は、毎年大幅に増加しており、2020年の東京オリンピックまでさらに右肩上がりで増え続けると考えられます。訪日外国人は東京などの観光スポットだけでなく、日本の古き良き文化を求めて地方へと観光に訪れることも非常に多いです。
地方に訪れた外国人観光客の旅行の満足度は、そこがいかに過ごしやすかったかに左右されます。つまり販売店や観光地での外国語の対応がどれくらいできているかが重要なのです。
街中の看板などに英語表記が加わっているものは最近よく見かけることもありますが、外国人とのコミュニケーションを円滑にできる人材というのは、充分とは言えません。そこで、自動翻訳イヤホンなどのツールを使うことで、双方の円滑なコミュニケーションを実現できるのです。
旅行コンテンツとしての活用
地方への観光で何よりも重要なのが、「ここに来てよかった」と思える体験です。これによりリピーターを増やしたり、口コミで訪問客を増やすことができます。IoTを利用したコンテンツを提供することで、一度来た人がまた訪問したくなるようなサービスを実現することができるのです。
観光分野のIoT導入事例
日光市
日光市は、ビーコンと呼ばれるセンサーとIoTを活用し、次世代のガイドマップを実現を実験的に行っています。具体的には、街中にセンサーを設置し、近くを通りかかるとスマートフォンにイベント情報などをプッシュ通知します。アプリは英語や中国語、韓国語に対応しており、日本語が読めない訪日外国人でもわかりやすい情報を届けることができます。新しい情報が自動的に届く、いわば新しいガイドマップの形であると言えるでしょう。
口コミや写真を投稿できるSNSのような機能もあるため、より観光客の視点に近い情報を得ることが可能になります。ビーコンは消費電力が少ないという利点があるので、街中にたくさん設置しても、自治体などの経済的な負担も少なくなるのです。
IoTレンタルサイクル
香川県では地域振興の一環として「瀬戸内国際芸術祭」が開催されます。その舞台の一つである香川県の豊島には、島内での移動手段としてレンタルサイクルの用意がされています。
このレンタルサイクルにはセンサーが搭載されており、位置情報やバッテリー残業、アクセルやブレーキの使用情報を発信することが可能。島内の安全な移動を実現しています。例えばコースアウトなどの予期せぬ事態が起こりそうになった時には、ユーザーのスマートフォンに通知を発信し、防ぐことができるのです。
IoTおもてなしクラウド
広島県内で実証事業がスタートした「IoTおもてなしクラウド」は、地方の観光地巡りをスムーズに行うことができるようになる施策です。
訪日外国人観光客が日本の地方観光をする際に課題となるのが、空港や都市部から観光地への交通です。言葉が通じない環境でバスやタクシーを乗り継ぐのは非常に難しいでしょう。
そこでIoTを活用し現地での移動をスムーズに行うことができるようにするというプロジェクトが「IoTおもてなしクラウド」なのです。
具体的な施策は以下の通りです。まず訪日外国人は、空港や市内のゲストハウスなどで「訪日外国人観光客周遊乗車券(Visit Hiroshima Tourist Pass)」を購入、自らのパーソナルデータを登録し、交通系ICカードと連携させます。そして複数用意された県内の観光プランを選択します。するとこのプランに参加している交通機関や旅行サービス業者は、登録された訪日外国人のパーソナルデータに基づき、その人に合ったサービスを提供することができるようになるのです。
このように交通機関の連携によって、スムーズな観光地の移動が可能になり、訪日外国人が自分に合った観光を体験することが可能になります。これらの実証は2018年にスタートされ、2020年に向け社会実装を目指しているようです。
スペイン バルセロナ
最後に海外の事例を紹介します。スペインのバルセロナでは、街中の駐車場にセンサーを設置し、市内全域の駐車場の埋まり具合のデータを配信しています。駐車場を探してあちこち移動する手間を解消し、渋滞の緩和にもつながります。また無駄になる駐車スペースも減るので、駐車場収入も向上しているようです。
この仕組みは土地勘のない観光客には非常に有益なサービスです。このサービスの導入により観光客の滞在時間も増え、観光収入も増加したと言われています。
今後の需要
ここまで、観光分野でのIoT導入事例を紹介しました。
観光は日本政府や、多くの地方自治体が注目している分野です。
政府は、2020年の訪日外国人の数の予想を、当初の2000万人から4000万人に引き上げました。「観光先進国」の実現を目指し、平成28年の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において、「明日の日本を支える観光ビジョン」と呼ばれる新しい観光ビジョンを策定しています。このビジョンに盛り込まれた施策を実施することで、訪日外国人旅行者が快適に観光できる整備を整えようとしているのです。
具体的には、「宿泊施設インバウンド対応支援事業」、「交通サービスインバウンド対応支援事業」、「地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業」を対象として補助金の交を行なっています。また無料公衆無線の環境の整備促進や、手続きの簡略化などを検討する協議会も設置されています。
日本政府が国を挙げて観光業に注力していることがわかります。
観光の分野でのニーズを満たす要素としてテクノロジーが挙げられます。IoTやスマホアプリなどテクノロジーをうまく利用して対応していくことが求められます。
旅行客誘致の情報発信だけでなく、空港や駅などの交通拠点の案内所にIoTデバイスを設置するなどの施策も考えられます。IoTとデジタルサイネージを使うことで、街中のマップを表示したり、情報やクーポンを配信することも可能です。テクノロジーの活用によりさらなる施策が実現できるでしょう。
観光分野におけるIoTの需要は、今後も訪日外国人や国内旅行者の増加に伴って、高まっていくでしょう。
IoTは日本の観光を盛り上げる!
この記事では以下の内容について開設しました。
- 観光の課題
- 観光分野におけるIoT導入のパターン
- IoT導入事例
- 観光分野のIoTの今後の需要
事例を見ると、実用的なものからユニークなものまで、その活用方法は多岐に渡ることが理解できたのではないでしょうか。
先述の通りこれから先日本はますます観光のニーズが高まってくると予想されていますので、IoTが地方の観光客、訪日外国人の観光体験を向上させるツールになっていくでしょう。