「IoEとは何だろう?IoTとはどう違うのだろう?」と考えていませんか?
人工知能やビッグデータなど先端テクノロジーの登場により、産業の形は徐々に変化しつつあります。
こういった流れの中で、「IoE」という言葉も誕生しました。
IoEはIoTをさらに発展させた新しい上位概念です。
とはいえ、「IoEとは何かよくわからない」「IoTと何が違うの?」という方も多いでしょう。そこでこの記事では、IoEの概要やIoTとの違いなどについて解説します。具体的には以下の通りです。
・IoEとは何か?
・IoTとは何か?IoTとIoEの違いは?
・IoEで世の中はどう変わるのか
・IoE社会の事例
この記事を読んで、産業や私たちの生活を大きく変える可能性を秘めている「IoE」について理解しましょう。
IoEとは何か?
IoEは「Internet of Everything」の頭文字を取ったもので、直訳すると「すべてのインターネット」となります。2012年にアメリカのcisco社によって提唱された言葉であり、世の中のあらゆるすべてがインターネットとつながることを意味します。
IoEのすべて「Everything」とは、人や公共施設など、文字通り「身の回りのものすべて」です。例えば街や道路、公園がインターネットと接続されることで、これまで各々で運営されていた施設をすべて統括することもできるでしょう。
IoE社会では、私たちの暮らしに関わる全ての物事がインターネットと接続されることとなります。このような大きな変化は新たなビジネスを創出したり、国や地域が抱えている課題を解決する鍵にもなり得ます。
日本ではIoEの採用事例は少なく、身近に感じることはあまりないでしょう。
しかし、世界的に見るとIoEの市場規模は大きく、2020年にはに約 1,400兆円もの市場規模になるとまで言われています。
IoTとは何か?IoTとIoEの違いは?
IoTとは
IoTとは「Internet of Things」の頭文字を取ったもので、直訳すると「モノのインターネット」となります。身の回りのあらゆる「モノ」をインターネットとつなぐ技術を意味します。
普段生活で使用するモノをインターネットとつなぐことで、データの収集や音声・スマートフォンからの操作などが可能になります。
IoTの仕組みとしては、まずあらゆる「モノ」にセンサーが搭載されます。そしてセンサーが感知した情報をインターネットを通してクラウドに集約したり、スマートフォンから操作することが可能になるという技術です。
IT分野の専門調査会社IDC Japanの調査では、IoT市場全体の支出額は、2017年の5兆8160億円から、2022年には11兆7010億円に達すると予測されています。
IoTは実際に実用化されている例も多くあり、医療や物流の分野、さらには交通や農業ま様々な範囲で適応されています。
IoEと似た概念「 IoA」とは
IoEとIoTに似た概念として「IoA」というものがあります。IoAは「Internet of Ability」の頭文字を取ったもので、直訳すると「能力のインターネット」となります。つまり人間の能力そのものがネットワークとつながる概念です。非常に想像しづらいかもしれませんが、「人間のぬ力を拡張するもの」と考えるとわかりやすいでしょう。
東京工業大学の研究では、ドローンを使ったIoAの研究が行われています。まず人間がヘッドマウントディスプレイを装着し、ドローンからの映像を流します。そして人間の動きをドローンに反映することで、人間の体がドローンと一体化した感覚となり、空を飛んでいるかのような体験をすることが可能になるのです。
IoTとIoEの違い
IoEはIoTの上位概念、最終的な段階と言えます。
つまり、世の中のモノがインターネットに接続された先に、モノ以外の人やデータ、場所といったまさに「すべて」をインターネットと接続するのです。IoTとIoEの違いはその接続対象の幅の広さであると言えるでしょう。
医療の分野では、IoTの研究開発が行われており、例えば患者の睡眠状態や呼吸数・心拍数といったバイタルサインをモニタリングする、いわば「スマートベッド」が開発されています。このスマートベッドを医療現場に導入することで、患者のデータを取得することができ、データベースやカルテなどと連動することが可能になります。ここまでがIoTが普及した場合です。
そこからさらにIoEが普及した場合、ベッドから取得できるデータの種類や質も多岐に渡るようになり、さらに患者の状態に応じた治療が「自動的に」行われるようになるかもしれません。
IoEとICTの違い
ICTは「Information and Communication Technology」の頭文字を取ったもので、情報伝達技術と訳されます。情報技術を意味する「IT」とほとんど同義ですが、海外ではITよりもICTを使うことが多いです。
ICTは広範囲のものに適応できる言葉で、インターネットやスマートフォン、ビッグデータなどあらゆるテクノロジーを指す言葉として使用されます。
日本では公的機関の資料などに頻出することが多いです。例えば文部科学省の「ICT教育」や総務省の「ICT成長戦略」などが挙げられます。
IoEはすべてのものがインターネットと接続されることを意味するのに対し、ICTは情報伝達技術そのものをまとめて意味する言葉であると言えます。
IoEで世の中はどう変わるのか
IoEの普及により世の中がどのように変わるのかを紹介します。
ビジネスの変化
インターネットの普及により、ネットショップが増えたように、IoEによりビジネスの形に変化が起きると考えられます。
IoEを活用すれば企業は今以上にユーザーの習慣や好みなどから、最適なサービスを提供できるようになります。より個々人を対象としたサービスや広告の提示が可能になるでしょう。
IoEによって大量のデータを企業側が取得できれば、さらに可能性は広がります。例えば顧客が店舗に来店した時に、その顧客の購入履歴や好みなどを元にしたアプローチをすることができるようになるかもしれません。
行政サービスの変化
行政サービスの形もIoEによって変化すると考えられます。実際にバルセロナでは、電力量の計測機器がインターネットとつながっている「スマートメーター」の活用や、容量をセンサーが感知するゴミ箱など、行政サービスへのIoEの活用が行われています。さらにバルセロナ市役所では、公共情報をオープンデータサービスで一元管理しており、自宅にいながら住民票などを受け取ることが可能になっています。
結果として街全体のコスト削減を実現することができるので、都市や地方の課題解決に寄与すると考えられます。
雇用の創出
前述のバルセロナでは、スマート都市化によって1,500社以上の会社と4,400人分の雇用を生んでいると言われています。テクノロジーを活用したサービスを開発するベンチャー企業なども増え、ますます便利な都市を作り上げているのです。テクノロジーの台頭は雇用を失くすと言われることもありますが、実際はこれまでになかった仕事など新たな雇用を創出することが多いのです。
医療の変化
IoEによって、医療の形も大きく変化していくと考えられます。現在手動で行われている様々な計測や検査を自動的にできるようになるでしょう。医療記録を体系的に集約して保存することで、医療従事者が判断に必要な情報に簡単にアクセスできるようになるかもしれません。
IoEで身の回りのすべてがインターネットとつながった場合、日常的に継続してデータを計測できることになるでしょう。必要な時に受診するという行動は根底から覆る可能性もあります。
ウェアラブル端末などでバイタルデータを取得し、IoEを通じて担当医に転送することができるようになれば、そのデータを受け取った医師は分析機器やAIを活用し、処置すべき問題を素早く発見し対処することができるようになるのです。
IoE社会の事例
ドイツのハンブルグ
ドイツのハンブルグにあるハンブルグ港では「処理能力の拡大」と「交通渋滞の解消」という2つの課題解決の手段としてIoEが活用されています。港の道路にセンサーを多数設置することで、管制センターで交通量や交通状況を全てリアルタイムで把握できるような仕組みを整えました。船舶の運航状況も共有されているので、状況に応じて交通パターンを変更することも可能になります。またハンブルグのハーフェンシティでは、街の駐車場にセンサーが搭載されており、駐車場の空き具合を住民は全てスマートフォンから確認できます。
オーストラリア
オーストラリアの交通管理会社ASFINAGは、IoEの技術を活用し、交通事故を未然に防ぐ道「スマートハイウェイ」を実現しています。IoEにより、道路の安全に必要な情報を収集しています。
具体的には、70,000台以上ものセンサーと 6,500台以上のカメラを設置し、道路とドライバーをネットワークに接続。緊急車両の誘導、ドライバーへの最新情報の提供を行いましう。さらにドライバーは天気による交通への影響や、渋滞を未然に防ぐ予測など様々な情報を得ることができているようです。
IoTとIoEで今以上に豊かな生活が実現する
この記事では、以下の内容について解説しました。
・IoEとは何か?
・IoTとは何か?IoTとIoEの違いは?
・IoEで世の中はどう変わるのか
・IoE社会の事例
IoEがIoTの上位概念であることが理解いただけたのではないでしょうか。
すべてがインターネットにつながると言ってもあまり想像できないかもしれません。
ただ、ひと昔前ではスマートフォンのような、電話がインターネットにつながるものなど到底考えられていなかったことです。
これと同様のことは今後も起きていくと考えられます。それにしたがって、これまで存在しなかったようなビジネスや豊かな生活が誕生することでしょう。