この記事の執筆者はハルヨン代表の はるじぇー @HAL_J です。
日本で受けられる英語の試験にはさまざまな種類がありますが、特に知名度の高い試験として「TOEIC試験」と「TOEFL試験」の2つが挙げられます。
この2つの試験には、形式や内容、試験結果の活用方法などに大きな違いがあるのですが、どのように違うのかを知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、TOEICとTOEFLの違いを細かく比較し、読者の方々が目的を達成するためには、どちらの試験を受ければ良いのかが明確に分かるように説明していきます。
TOEIC試験、TOEFL試験の概要
TOEICとTOEFLはどちらも、アメリカの非営利テスト機関であるETSによって作成された試験です。
TOEICは英語を母国語としない人たちの英語力を測るために作成された試験です。それに対して、TOEFLは主にアメリカの大学への入学希望者の英語力を測ることを目的に作成されました。
以下でこの2つの試験の違いを細かく説明していきます。
TOEIC TOEFLの違い
それぞれの試験の種類
TOEIC、TOEFLはどちらともに試験にいくつかの種類があります。
TOEIC試験で最も一般的で、受験者数が多いのは「TOEIC LR試験(Listening & Reading)」で、これはリスニングとリーディング力を測る試験です。また、本記事内で「TOEIC」と記載されている場合には、基本的に「TOEIC LR試験」のことを指しています。
書店で特によく見かけるTOEIC LR試験の参考書は下記の公式問題集です。
公式TOEIC Listening & Reading 問題集 7
公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 6
こういった大判の参考書はみなさんも一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。そして、2019年度は220.5万人、2018年度245.6万人、2017年度248.1万人もTOEIC LR試験を受験したので、この記事を読んでいる方の大多数も一度は試験を受験したことが有る方ばかりでしょう。
※2020年度はCOVID19の影響で試験が中止になっているため、受験者数は大きく落ち込むことが予想されています。抽選方式で受けられない人達が続出していました。
TOEIC LR試験以外では「TOEIC SW(Speaking & Writing)」というスピーキングとライティングを測る試験が有ります。ただ、こちらは日本人がまさに苦手としている「英会話」と「英作文」の試験であるため、未だに受験者数はTOEIC LR試験と比べて段違いに少ないです。
2020年2月に発売されたTOEIC(R) Speaking試験対策の教材。TOEIC LR試験の点数だけだともはや差がつかない韓国では、Speaking試験も重視されています。が、日本はまだあと数年はそういう状況にはならないかと思われます。
次に、「TOEIC Bridge」と呼ばれる「TOEIC LR試験」よりも難易度が低い初心者向けの試験、TOEIC500点未満の人達にお勧めの試験があります。しかしながら、こちらも受験者はほとんどいません。
このようにSW試験もBridge試験のどちらの試験も未だに知名度が低いので、一般的にはTOEICは「TOEIC L&R試験」のことを指します。
そして、一般的にTOEFLと呼ばれるものは「TOEFL iBT試験」のことを指し、この試験はテスト会場でインターネットを通して受験する試験です。TOEFL iBTは、英語の4技能(聞く・話す・読む・書く)をすべて測定する試験であり、TOEIC L&R試験よりも難易度が格段に高いです。受験料もTOEIC L&R試験の4倍以上(235アメリカドル、約25,500円 ※2020年8月時点)と格段に高いです。
企業や大学などで団体受験をする際には「TOEFL iTP試験」が用いられることが多く、こちらは主にリスニングとリーディング力を測定する試験で「TOEIC LR試験」に類似しており、受験料も安いです。
そして、TOEFL iTP試験はiBT試験より易しい試験として位置づけられています。そのため、TOEFL iTP試験で少なくとも500点以上の点数を獲得してから、TOEFL iBT試験に移行していく学習計画がお勧めです。
上記画像はTOEFL iTP試験の紹介ページにあったものです。
それぞれのスコアが必要になる場面
TOEICとTOEFLでは、以下のようにそれぞれスコアを必要とする場面が違います。
TOEIC LR試験
- 大学の単位認定
- 就職活動
- 会社内での昇格、昇進
- 海外赴任
TOEFL iBT試験/iTP試験
- 海外(主に米国)の大学への留学および入学
このように、日本国内ではTOEICスコアのほうが利用頻度が高いです。「TOEIC900点」と聞けば英語力が高いんだな、と認識してもらえます。しかし、「TOEFL iBT 80点」と聞いてもピンと来ない人が大多数です。ちなみに後者の方が英語力は高いです。
そのためどちらを受験すれば良いかわからず、海外の大学へ進学したいなどの明確な目的がない場合には、TOEIC L&R試験の受験をおすすめします。
TOEIC S&W試験も現時点では知名度が低い、かつ適切にその点数を評価できる人がほとんどいない、という事情がありますのでTOEIC S&W試験の受験も不要です。
なお、TOEIC(R) Speaking & Writing試験はTOEIC LR試験で800点を超えている学習者にとっては次の段階に進むのにとても良い試験であるため、資格云々について考えなければ、挑戦してみる価値は有ります。TOEIC LR試験で990点満点ではなく、1,390点満点(TOEIC SW試験の満点は400点+TOEIC LRの990点)の世界に挑戦したい方は挑戦下さい。
まずは下記教材で試験内容を把握し、模範解答を暗記しましょう。
試験形式
TOEIC L&R試験が集団で受ける試験であるのに対して、TOEFL iBT試験は個別で試験センターのパソコンを使って受験する試験です。そのためTOEIC L&R試験は一斉に試験がはじまりますが、TOEFL iBT試験は人によって開始時間や進行速度に違いがあります。
TOEFLの場合、自分がリスニングの問題を解いている際に、ほかの受験者がスピーキングパートを解き始めるという状況が起こり得るので注意してください。
一方、TOEICは、よくあるマークシート式の試験なので多くの人に馴染みがあると思いますが、TOEFLはタイピングなどのパソコン操作が必要なため、パソコンに慣れていない人はあらかじめ対策しておくのがおすすめです。※TOEIC S&W試験でもタイピングが必要です。
パソコンで解答していくTOEFLの利点としては、マークシート式のTOEICではたまに起きてしまう、マークずれの心配をしなくて良いことが挙げられます。さらにTOEIC LR試験ではメモ取りが禁止※されていますが、TOEFLでは全パートでメモを取れるのも一つの利点です。
※TOEIC S&W試験ではメモ取りが2019年に解禁されました。
そのほかに、TOEICは試験時間が約2時間なのに対し、TOEFLは約3時間※にもおよぶ長丁場の試験なので、英語力以前に高い集中力が求められるという違いがあります。※2019年に試験時間が短縮されました。
難易度
ここまで読んでいただければわかる通り、TOEFL iBT試験はTOEIC L&R試験よりも難易度が圧倒的に高い試験です。その理由を以下にまとめました。
TOEIC L&R試験と比較してTOEFL iBT試験の難易度が高い理由
- 試験時間が約3時間もある
- パソコンを使って問題を解く必要がある
- リスニング、リーディング共に、1問あたりの量が多い
- アカデミックな問題(相対性理論や進化論などについて)を中心的に出題される
- 日本人が苦手とされる、スピーキング、ライティングパートがある
- 試験一回の受験料が25,000円を超えるものであるため、気軽な気持ちで複数回の受験が出来ない。
このようにTOEFL iBT試験は難易度が高い試験なので、海外の大学への進学を目的にTOEFL iBT試験をしたい場合には、まずはTOEIC L&R試験で最低TOEIC600点以上、出来ればTOEIC800点以上を取れるだけの基礎力を身につけるか、TOEFL iTP試験で500~550点取ってから、TOEFL iBT試験に着手されるのがお勧めです。
英語力が低すぎる場合にはTOEFL iBT試験には歯が立たないので、まずは大学受験参考書やTOEFL iTP試験向け参考書で基礎固めを行って下さい。
最低限、下記のレベルの英文(英検2級~英検準1級)の語彙を習得してからTOEFL iTP試験、TOEFL iBT試験に挑戦下さい。
これら2冊の品詞分解を満足に出来ない場合には、高校生英文法からの学び直しが必要になります。ハルヨンの高校英文法習得・復習クラスの受講を検討下さい。
TOEICとTOEFLのどちらを受ければ良いのか
ここまで読んでみて、TOEICとTOEFLの概要やそれぞれの違いが理解できたかと思います。
ここからはその違いを踏まえた上で、どちらを受験すれば良いのかを目的別に説明していきます。
海外留学
海外の大学への入学や、交換留学をしたい人で、既にTOEIC L&R試験600点以上(Reading Part 300点は必須)を取得している人、あるいはTOEFL iTP試験で500点以上はTOEFL iBT試験のための勉強を開始出来ます。
TOEFL iBT試験で80点以上のスコアを取得していれば、アメリカにある77%の大学の入学基準を満たします。
TOEIC L&R試験600点未満、TOEFL iTP試験で500点未満という英語の基礎が固まっていない段階で、より難易度の高いTOEFL iBT試験対策をするのは非効率なので、まずはTOEIC600点レベルの英語力を目指しましょう。
TOEIC500点未満の方、高校英文法から学びなおしたい方、またTOEIC500点前後から点数を伸ばしたい方は下記記事の内容を参考にして下さい。
就職活動対策
TOEIC L&R試験をまずは受験しましょう。現状、日本企業で求める英語試験はTOEIC L&R試験のみです。TOEIC L&R試験で必要点数を取得したら、あとはその後にある英語面接での受け答えを十分に出来るように英会話能力を高めましょう。また、英文履歴書の提出が必要な場合は英作文対策にも力を入れましょう。
日本企業でTOEFL iBT試験を求められることはまず無いので、就活対策ではTOEFLは無用です。
TOEIC L&R試験に関して述べると、「英語活用実態調査 【企業・団体/ビジネスパーソン】2019年」の資料によると、新卒採用時に49.1%の企業がTOEIC LR試験の点数を要件・参考にしています。※調査に回答した528の企業の回答結果です。
また、新卒採用時には平均545点以上のTOEIC LR試験の点数が求められています。おそらくですが、TOEIC LR試験で500点、550点、600点という点数がそれぞれの企業において求められていて、ここから545点という数字が導きだされているのでしょう。
このことから、就活前の大学生は、まずはTOEIC600点の取得を目標に学習に励むことをおすすめします。
関連記事
http://hal4.jp/toeic-job/
転職対策
転職活動も新卒時と同様に、TOEIC L&R試験一択です。あとは必要に応じて英会話・英作文対策をしましょう。
先ほどと同じ資料「英語活用実態調査 【企業・団体/ビジネスパーソン】2019年」からの紹介になりますが、2019年時点で英語を使用する部署の中途採用で要件・参考とされた基準は620点です。
実際のところ、TOEIC620点ではメールを読んだり、書いたりといった受動的な仕事しか出来ないため、社内でより能動的な業務をしたい場合、また英語力で足を引っ張られたくない場合には、TOEIC LR試験で700点、800点といった点数を新しい企業に転職するまでに取っておくことをお勧めします。
まとめると、
「既にTOEIC L&R試験で600点以上、またはTOEFL iTP試験で500点以上を取得していて、海外留学を目的としている人」はTOEFL iBT試験対策をする。
「就職・転職を目的としている人」はTOEIC L&R試験を受験し、TOEIC700点、TOEIC800点を獲得しておく。
になります。
TOEIC LR試験 勉強法に関わる関連記事の紹介
TOEIC LR試験で500点未満、500点前後の方は下記記事を参考に学習を進めて下さい。
TOEIC800点を超えていない方はまずはTOEIC800点超えを目指して学習を行いましょう。
この記事を書いた人
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