TOP画像: 短期間で大量の知識を定着させるために夏休みにフィリピン留学をした高校生のハナさん(写真右)
生成AIの登場で、英語教材を「理解する」ためのハードルは大きく下がりました。
分からない英文をChatGPTに入力すれば、英文法、構文、英単語・英語表現、発音、背景知識まで一瞬で解説してくれます。以前なら辞書や文法書を何冊も調べたり、先生に質問したりしていた内容を、いまではその場で確認できます。
これは英語学習にとって大きな変化です。
しかし、英語学習そのものが一瞬で終わるようになったわけではありません。
むしろ生成AIによって、「英語学習の本当のボトルネック」がはっきり見えるようになりました。
AIは一瞬で解説できる。でも人間は一瞬では覚えられない
ChatGPTは英文を一瞬で分析し、詳しい解説を作れます。しかし、その解説を読んだからといって、翌日からその英文法や英語表現を自由に使えるようになるわけではありません。
知識は、AIに解説させて「分かった」だけでは使えるようになりません。自分の中で何度も繰り返し、深く定着させ、「自動化」できるところまで持っていく必要があります。
英会話の最中に、「この場合は現在完了だからhaveを使って、その後ろは過去分詞で……」と毎回考えていたら、会話についていけません。
英文を読むときも同じです。英文法を一つひとつ思い出しながら読んでいては、大量の英文を速く読むことはできません。
知識として「知っている」だけではなく、ほとんど意識しなくても理解できる、口から出てくる状態まで自動化する。そこまでいって初めて、実際に使える英語になります。
そのためには、英文の意味を理解し、文法・語彙・英語表現を覚え、音声を何度も聞き、繰り返し音読し、英文を見ずに再現し、実際の英会話や英作文で使うという過程が必要です。
AIは理解を助けてくれます。しかし、人間の代わりに知識を自動化してくれるわけではありません。
解説があふれる時代、「何を学ぶか」を選ぶのも難しい
そして、生成AIによって新しい問題も生まれています。
解説が簡単に手に入りすぎることです。
英文を入力すれば、英文法、構文、語彙、類義語、関連表現、発音、背景知識など、いくらでも解説を出してもらえます。
しかし、人間が一度に覚えられる量には限界があります。
AIが出してくれた内容を全部勉強しようとすれば、いくら時間があっても足りません。むしろ大量の解説を次々に読んで「分かった」気になり、どれも十分に定着していない、ということも起こり得ます。
そのため生成AI時代には、「分からないことを調べる能力」以上に、「大量に出てくる情報の中から、いまの自分が何を学ぶべきかを選ぶ能力」が重要になります。
AI時代だからこそ、教材を増やすのではなく減らす
これは教材選びについても同じです。生成AIを使えば、いくらでも新しい教材を作れます。単語リストも、英文法問題も、長文問題も、英作文問題も、一瞬で大量に生成できます。
しかし、教材を増やせることと、英語が身につくことは別の話です。
むしろ私たちは、生成AI時代だからこそ、良質な教材を少数に絞って徹底的に使い倒すことが重要になると考えています。
その大きな理由の一つが、既存の良質な英文を生成AIに読み込ませれば、非常に詳しい解説を作れるようになったことです。
以前は、一つの英文から英文法、構文、英単語、熟語、語法、発音まで学ぼうとすると、辞書や文法書、単語帳など複数の教材を自分で調べる必要がありました。
しかし現在の生成AIは、英文を入力するだけで、その英文に含まれる文法・構文を分析し、重要な英単語・熟語・英語表現を拾い、語法やニュアンス、発音まで詳しく解説してくれます。分からなければ、その箇所だけさらに掘り下げて何度でも質問できます。
少なくとも個々の英文について詳しく調べる用途では、一般的な参考書や単語帳よりも生成AIの解説の方が詳しく、学習者が実際に読んでいる英文に即した解説を得られることも多くなりました。
だから、生成AI時代の英語学習では、「文法はこの参考書」「単語はこの単語帳」「熟語はこの熟語帳」と教材を次々に増やす必要性が以前より小さくなっています。
例えば、オンラインレッスンのハルヨン、フィリピン留学のバックワイズではTOEIC L&R試験の学習者に対して、TOEIC L&R試験公式問題集に加えて『金のフレーズ』などの試験対策に特化した単語帳を何冊も回すことを基本方針にはしていません。
参考: TOEIC L&R試験対策の定番単語帳 金のフレーズ
これは、「金フレをやらない」という話ではありません。
公式問題集の英文を徹底的に学び、その英文に登場する英単語・英語表現まで身につけるので、別のTOEIC単語帳を何冊も回す必要がないという考え方です。
公式問題集の英文を解いて答え合わせをして終わりにするのではありません。
英文の構造を理解する。分からない文法を確認する。重要な英単語・英語表現を覚える。音声を何度も聞く。音読する。そして、その英文や表現が自動的に理解できるところまで繰り返す。
生成AIは、この学習方法と非常に相性がいいです。
参考画像: 生成AIの助けを借りて解説を充実させたTOEIC L&R試験公式問題集の英文
公式問題集そのものはTOEICのために作られた良質な英文です。一方、公式問題集には、その英文から学べる文法・語彙・語法・英語表現について、学習者が必要とするすべての解説が載っているわけではありません。そこを生成AIに補わせることができます。
つまり、公式問題集という良質な「素材」に、生成AIという非常に優秀な「解説役」を組み合わせる。
これによって、一つの英文から以前よりはるかに多くのことを学べるようになりました。
AIによって教材を増やすのではなく、AIが優秀な解説役になったからこそ、教材を減らせる。
そして、浮いた時間を新しい教材に手を出すことではなく、すでに学んだ英文の音読・暗唱・復習に使い、知識が自動化されるところまで繰り返す。
これが、生成AI時代に私たちが考える英語学習です。
具体例 金のフレーズよりも詳しいAIの解説
例えば、TOEIC公式問題集に登場した英単語・英語表現を学ぶ場合でも、生成AIを使えば、その単語だけを切り離して覚えるのではなく、公式問題集の英文全体の文脈を踏まえた上で解説してもらえます。
例えば、以下のような英語表現です。
agree upon
- /əˈɡriː əˈpɑːn/ : ə-GREE-ə-PON
- ~について合意する : To reach an agreement about something.
- 解説:
the higher compensation figure that we agreed uponでは、thatがthe higher compensation figureを先行詞とする関係代名詞です。「私たちが合意した、より高い報酬額」となります。 - 発音のコツ: agree は GREE、upon は PON に強勢があります。
単語帳で agree upon=~について合意する と覚えるだけではなく、実際にその表現が使われている英文を材料にして、意味・文法・語法・発音までまとめて学習できます。ここでは agreed upon の意味だけでなく、その目的語となる先行詞との関係や、目的格の関係代名詞 that まで解説されています。
さらに分からない部分があれば、「なぜここではuponが必要なのか」「agree withとの違いは何か」「このthatは何なのか」と、その場で追加の質問をして、必要なところだけさらに深く学ぶこともできます。
このような解説を一つひとつ紙の参考書から探すのは大変でした。しかし生成AIなら、いま自分が学習している英文について、その英文に即した詳しい解説を一瞬で作れます。
TOEICだけでなく、英語の原著でも同じ
この方法はTOEIC公式問題集に限った話ではありません。英語の絵本や英語書籍を読む場合も同じです。
以前は、原著を読みながら分からない英文に出会うたびに、辞書や文法書を調べる必要がありました。しかし現在は、生成AIに英文を読み込ませれば、その英文に登場する英単語・英語表現、英文法、構文、背景知識まで詳しく解説してもらえます。
そのため、これまで自分の英語力では少し難しかった原著にも挑戦しやすくなりました。
私自身が英語の絵本や原著を読む際に生成AIをどのように使っているのかは、以下の記事で詳しく紹介しています。
TOEIC公式問題集でも英語の原著でも、考え方は同じです。
AIに新しい教材を大量に作らせるのではなく、すでに存在する良質な英文をAIの力で徹底的に読み解き、その英文から学べるものをできる限り学ぶ。
生成AIが優秀な「解説役」になったからこそ、教材を増やすのではなく、一つの良質な教材をより深く学べるようになりました。
だからといって「長時間勉強させればいい」わけではない
ここで注意したいのは、「定着には時間が必要」=「長時間勉強させればいい」ではないということです。
以前の記事では、フィリピン留学や日本の受験教育で見られる、長時間の授業や学習を子どもに課す教育について取り上げました。
1日10時間のレッスンを組み、予習・復習する時間すら十分に取れない語学留学。あるいは、小学生が親元を離れ、長期間にわたって1日13時間勉強する受験合宿。
学習時間を増やすこと自体が目的になってしまえば、知識を理解し、整理し、繰り返して定着させるという本来必要な学習から離れてしまいます。
重要なのは「何時間やったか」ではなく、「何を身につけたか」です。
▶ 関連記事:フィリピン留学と「教育虐待」について考える
生成AI時代には、この違いがさらに重要になると考えています。
教材も解説も無限に作れるからこそ、あれもこれも勉強するのではなく、学ぶ内容を絞り、その限られた内容を深く繰り返して定着させる。
必要なのは「大量の教材」「大量の授業」ではなく、必要な知識を選び、それを自分のものにするための十分な学習時間です。
英語を「分かった」で終わらせず、身につけたい方へ
ハルヨン(ハル英語4技能アカデミー)では、日本人教師が学習者の英語力に合わせて学ぶ内容を選び、英文法・英文読解から音読・暗唱、英会話まで、学んだ英語が実際に使えるようになるところまで伴走しています。
教材を次々に増やすのではなく、良質な英文を深く学び、繰り返し、自分の英語として定着させる。生成AI時代だからこそ必要になる英語学習を実践しています。
▶ ハルヨンのカリキュラム・受講案内
https://hal4.jp/
生成AIで英語教師の仕事はなくなるのか
生成AIがこれだけ詳しく英語を解説できるようになると、「英語教師はいらなくなるのではないか」と考える人もいるでしょう。
実際、英文法や英単語の意味を説明するだけの仕事は、生成AIによってかなり代替されていくと思います。
分からない英文をChatGPTに入力すれば、その場で何度でも質問できます。しかも学習者のレベルに合わせて、簡単にも詳しくも説明してもらえます。
では、英語教師は必要なくなるのでしょうか。
私たちはむしろ、英語教師の役割が「解説する先生」から「定着させる先生」へ変わっていくと考えています。
「解説する先生」から「定着させる先生」へ
ハルヨン(ハル英語4技能アカデミー)では、ここ数年、「既存の良質な英文を教師が徹底的に読み込み、生徒が身につくところまでやる」という方式で授業を行ってきました。
教師が毎回オリジナルの教材や解説を大量に作ることを重視しているわけではありません。世の中にはすでに良質な英文や教材がたくさんあります。
教師がそれらを事前に徹底的に読み込み、「この生徒はいま何を学ぶべきなのか」「この英文から何を身につけるべきなのか」を選ぶ。
そして授業で理解を確認し、音読・暗唱を繰り返し、実際に使えるところまで練習する。
一度理解して終わりではありません。同じ英文・英語表現に何度も触れ、考えなくても意味が分かる、考えなくても使えるところまで自動化することを目指します。
この方式は、生成AI時代とかなり相性がいいと考えています。
生成AIによって「解説を作ること」のコストが急激に下がる一方で、「何を学ぶかを選ぶこと」と「学んだ内容を自動化できるところまで定着させること」の重要性はむしろ高まっているからです。
ハルヨン/バックワイズが提供するのは「選ぶこと」と「定着させること」
ハルヨンや語学学校バックワイズの役割も、単に英語を「解説すること」ではありません。
あふれる教材や解説の中から、その人がいま何を学ぶべきなのかを選ぶこと。そして、選んだ知識を繰り返し練習し、自動化できるところまで定着させるための「時間」と「場所」を提供することです。
どの英文法を学ぶのか。どの英文を精読するのか。どの英単語・英語表現を覚えるのか。どこまで音読・暗唱するのか。
すべてを学ぶ必要はありません。
日本人教師が学習者の英語力に合わせて学ぶ内容を選び、理解を確認する。そして音読・暗唱を繰り返し、さらにフィリピン人教師とのレッスンで実際に使う。
「何を学ぶかを選ぶ」→「理解する」→「繰り返す」→「実際に使う」→「自動化する」。
ここまでが、これからの英語教育に必要だと考えています。
生成AIによって「分からない」を解決することは、以前よりずっと簡単になりました。
しかし、人間が英語を身につけるために必要な時間まで消えたわけではありません。
だからといって、教材や授業を大量に与えればいいわけでもありません。
学ぶものを絞る。そして、それを深く学ぶ。何度も繰り返す。実際に使う。自動化する。
生成AI時代には、教材を増やす必要はありません。
むしろ生成AIがあるからこそ、本当に良質な教材を少数に絞り、一つの英文から文法も、語彙も、発音も、英語表現も徹底的に学ぶことができるようになりました。
AIがどれだけ賢くなっても、AIの中にある知識が、そのまま自分の知識になるわけではありません。
最後に必要なのは、AIが持っている知識を眺めることではなく、自分自身が使える知識として身につけることです。
そしてこれからの英語教師に求められるのは、たくさん解説することでも、大量の教材を与えることでも、長時間の授業を提供することでもありません。
生徒が本当に必要なものを選び、良質な教材を一緒に深く学び、それが自動化されるくらい身につくところまでやること。
それが生成AI時代に、ハルヨンと語学学校バックワイズが提供していきたい英語教育です。
「理解」で終わらず、使える英語まで身につけたい方へ
ハルヨンと語学学校バックワイズでは、教材や授業を大量にこなすことではなく、その人に必要な英語を選び、理解し、繰り返し、実際に使い、自動化できるところまで定着させることを重視しています。
日本にいながらオンラインで英語の基礎から学び直したい方は「ハルヨン」、日本で事前学習を行った上でフィリピン留学に挑戦したい方は「バックワイズ」をご覧ください。
▶ ハルヨン(ハル英語4技能アカデミー)
https://hal4.jp/
▶ 語学学校バックワイズ
https://backwise.jp/

